〈ヨウ化ナトリウムカプセルによる〉外来アブレーションを受ける患者さんへ監修東京医科大学病院放射線科教授阿部光一郎先生目次はじめに…………………………………………………………………………………3残存甲状腺除去(アブレーション)とは?………………………………4どういうお薬ですか?……………………………………………………………5外来アブレーションが受けられる条件は?(対象となる患者さんは?)…………………………………………………………6どのような治療をするのですか?…………………………………………7治療に必要な準備とは、どのようなことですか?…………………8治療準備1…………………………………………………………………………8体内の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量を増やす治療準備2……………………………………………………………………………9ヨウ素制限(ヨウ素を多く含む食事の制限)治療のスケジュール(外来アブレーションの流れ)……………………10外来アブレーション後の注意事項………………………………………12副作用について……………………………………………………………………14投与日・観察日の記録……………………………………………………………………15アイソトープ治療に関する情報サイト2はじめにこの冊子は、甲状腺癌の甲状腺全摘術後にヨウ化ナトリウムカプセルによる残存甲状腺除去(アブレーションと略します)を外来で受ける患者さんを対象として、治療の内容やスケジュール、外来で行うための注意すべきことについて紹介しています。ヨウ化ナトリウムカプセルによる甲状腺癌の治療は、放射線治療病室という専用の病室に数日入院する必要があります。しかし、2010年10月より、ある限られた条件の下においては、外来での治療が可能となりました。外来治療を行うには、患者さんおよび同居するご家族が、指示通りの生活を送ることが条件であり、患者さん自身のご希望はもとよりご家族の協力が必要となります。この外来アブレーションを受けるときは、担当の先生や医療スタッフの説明を受け、注意事項をよく守ってください。3残存甲状腺除去(アブレーション)とは?甲状腺癌と診断され、手術により甲状腺をすべて取り除いても、わずかに甲状腺の細胞が残っている場合があります。アブレーションとは、このわずかに残っている甲状腺を放射線で除去する治療法です。アブレーションを行っておくと、万が一再発した場合に発見しやすくなることが知られています。従来、この治療を行うためには、専用の病室に入院して放射線管理を徹底する必要がありました。しかし、1,110MBq(メガベクレル)の投与量で一定の条件を満たせば周りの人たちへの放射線の影響を抑えることができることが証明され、2010年から外来での治療が可能となりました。残存する微少な甲状腺細胞放射線ヨウ素4どういうお薬ですか?治療は、放射線(ベータ線とガンマ線)を出すアイソトープのヨウ素(I-131)が1,110MBq(メガベクレル)含まれたカプセルを服用して行います。甲状腺はヨウ素を取り込む性質があり、体内に吸収されたアイソトープのヨウ素は、わずかに残った甲状腺細胞に集まり、甲状腺細胞にベータ線を照射して効果を示します。また、同時に出るガンマ線を利用して、体の外から専用のカメラで写真(シンチグラムといいます)を撮ることができます。そのため、きちんと集まったかどうかを確認するために、数日後にシンチグラムを撮ることもあります。その後、数ヵ月間症状を観察したあとに、治療効果を判定する検査の際にも、アイソトープのヨウ素を服用することがあります。その場合は、もっと少ない放射線の量のカプセルを服用します。アイソトープ内服3日後の全身前面のシンチグラムガンマ線体外に出てきたガンマ線を利用してシンチグラムを撮ります。膀胱甲状腺ベータ線I-131(治療効果)(提供:東京医科大学病院阿部光一郎先生)5甲状腺の部分胃、腸外来アブレーションが受けられる条件は?(対象となる患者さんは?)以下のような患者さんが、外来アブレーションを受けることができます。▶疾患・手術内容に関する項目(不明な場合は主治医にご確認ください)■遠隔転移がない分化型の甲状腺癌(濾胞癌、乳頭癌)■甲状腺を全摘している。(亜全摘術等では受けられません)▶ご自身の生活環境などに関する項目■小児または妊婦が同居していない。■1年以内の妊娠、授乳を希望しない。■自身で自立した生活ができる。(1日当たりの介護が6時間以内)■住居に水洗トイレが設けられている。(尿などの排泄物が同じ場所に蓄積されないトイレが設けられている)*主に尿中にアイソトープのヨウ素が排泄されるためです。■投与後3日間は家族と別の部屋で1人での就寝が可能である。■同居する家族の理解と協力が得られる。■治療後の注意事項(12〜13ページ)について理解し、実践できる。6どのような治療をするのですか?▶治療の方法■治療用のカプセルを1回服用します。*…治療用のカプセルを服用するのは1回ですが、服用する数週間前から準備が必要になります。(⇒8ページ)▶服用するカプセルの大きさやアイソトープのヨウ素の量6.0mm×17.5mmの大きさのカプセルを1個飲んでいただきます。においや味はありません。ヨウ化ナトリウムカプセル-30号1,110MBq約0.000241mgカプセルは実物大です。カプセルの種類アイソトープのヨウ素の量(検定日時1カプセル中)7治療に必要な準備とは、どのようなことですか?治療効果を高めるためには残存している甲状腺細胞にアイソトープのヨウ素をたくさん集める必要があります。治療用のカプセルを服用する前に、治療2〜4週間前から治療3日後まで、2つの準備が必要になります。治療準備1体内の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量を増やす体内のTSHが多くなると、甲状腺が刺激されて、甲状腺にヨウ素が多く取り込まれるようになります。体内のTSHの量を増やす方法には2種類あります。1外因性刺激法(rhTSH法)TSHのお薬(遺伝子組換えヒト型甲状腺刺激ホルモン製剤;rhTSH)を注射して、直接増やす方法です。治療用のカプセルを服用する2日前と1日前の2回注射します。2内因性刺激法(甲状腺ホルモン休薬法)服用している甲状腺ホルモン剤を中止する方法です。甲状腺ホルモン剤の中止期間は施設によって異なりますが、治療用のカプセルを服用する2〜4週間前から2日後まで行います。体内の甲状腺ホルモンの量が少なくなると、甲状腺ホルモンをつくろうとして、体内のTSHの量が多くなります。〔注意事項〕体内の甲状腺ホルモンの量が少なくなると、甲状腺機能低下の症状(寒気、むくみ、体重増加、便秘、疲労感、うつ症状)が現れてきます。また認知機能など判断力の低下も起こることがありますので、車などの運転は行わないようにしてください。8TSH;Thyroid…Stimulating…HormonerhTSH;recombinant…human…TSH治療準備2昆布海苔昆布だし入り調味料ヨウ素制限(ヨウ素を多く含む食事の制限)治療用のカプセルを服用するおよそ2週間前から服用2日後くらいまで、ヨウ素が多く含まれる食品の摂取を控えていただきます*。ヨウ素制限とは甲状腺は、甲状腺ホルモンを作るためにヨウ素を取り込みます。ヨウ素は、昆布や海苔といった海藻類に多く含まれており、これらの食品を好んで食べる日本人は、1日に1〜3mgのヨウ素を食べていると言われています。これに対して、治療量のアイソトープのヨウ素1,110MBq(メガベクレル)中のヨウ素の量は、およそ0.0002mgとごく微量です。従って、通常の食事を続けている状況では普通のヨウ素が多く体内に蓄積しており、治療用のカプセルを飲んでもアイソトープのヨウ素がほとんど甲状腺に取り込まれず、治療効果が得られないことが予測されます。そのため、体内のヨウ素の量を減らす目的で、治療の2週間ほど前からヨウ素を多く含んだ食品の摂取を控えていただきます。*食事内容やヨウ素制限の期間については、主治医の指示に従ってください。効果的な治療には、ヨウ素制限がとても重要です〈ヨウ素制限が十分だと〉ヨウ素の量が少ないアイソトープのヨウ素が取り込まれやすい〈ヨウ素制限が不十分だと〉ヨウ素の量が多いアイソトープのヨウ素が取り込まれにくいヨウ素アイソトープのヨウ素9治療のスケジュール(外来アブレーションの流れ)外来アブレーションには2種類の方法があります。rhTSH法(甲状腺ホルモン剤を休薬せず、TSHのお薬を注射する方法)事前説明*・治療を受ける前後の注意事項・同意書(家族の方も)内服2週間前2日前1日前内服当日2日後1ヵ月後6ヵ月後1年後治療までの準備期間遺伝子組換えヒト型甲状腺刺激ホルモン製剤注射遺伝子組換えヒト型甲状腺刺激ホルモン製剤注射カプセル内服内服後1時間休憩(注意事項の確認等)指示を守った生活1ヵ月に1回程度の定期検診治療効果の判定(再治療の検討)10ヨウ素食事制限経過観察〜〜甲状腺ホルモン休薬法内服2~4週間前事前説明*・治療を受ける前後の注意事項・同意書(家族の方も)内服2週間前内服当日2日後1ヵ月後採血/カプセル内服内服後1時間休憩(注意事項の確認等)指示を守った生活1ヵ月に1回程度の定期検診治療効果の判定(再治療の検討)*事前説明は家族の方とごいっしょにお受けください。治療までの準備期間(甲状腺ホルモン剤の種類を、内服4週間前から2週間ほど変更する場合があります。)内服3日後6ヵ月後1年後11ヨウ素食事制限経過観察甲状腺ホルモン剤中止期間〜〜12外来アブレーション後の注意事項あなたの服用したアイソトープのヨウ素は、帰宅後も少ない量ですが放射線を出します。そのため、ご家族や周りの人に及ぼす放射線の影響をできるだけ少なくすることが必要です。3日間(服用2日後まで)ほど注意して生活することにより、他の方への影響を避けることができます。周りの人が放射線を受ける量は、あなたと接する時間が短ければ短いほど、あなたからの距離が離れれば離れるほど減ります。他の方との距離を保ち、近くで過ごす時間を短くすることが大切です。服用後◦服用直後の1時間ほど治療室の近くに待機していただきます。(ご気分が悪くなられた場合はただちにお近くの医療スタッフにお知らせください)◦服用直後の1時間ほどは食事をしないでください。帰宅途中◦吐き気、嘔吐への対応にエチケット袋などを携帯してください。◦できるだけ公共交通機関を利用しないで3時間以内に帰宅してください。◦自家用車を利用する場合は運転者との距離をとるため後部座席に座ってください。また、ホルモン休薬法にてアブレーションを受けた患者さんご本人が運転することは禁止です。ただし、rhTSH法(甲状腺ホルモン剤を休薬せず、TSHのお薬を注射する方法)であれば運転してもかまいません。◦公共交通機関を利用する場合は、連続しての乗車を1時間以内にしてください。(…ラッシュアワーや混雑した車両を避け、特に小児や妊婦と接する時間を最小限にしてください)◦治療者カードを携帯してください。服用から帰宅まで帰宅後3日間日常生活◦ヨウ素制限を続け、十分な水分を摂取してください。◦小児・妊婦の来訪はお断りください。(4日目以降、7日目までは小児・妊婦が来訪した場合は密接な接触は避けてください)◦トイレ使用後は2回洗浄してください。男性でも座って排尿してください。◦1人で最後に入浴し、入浴後は直ちに浴室を洗浄してください。◦タオルや衣類は他の人と共用せず、洗濯も分けて行ってください。◦旅行、移動はできるだけお控えください。◦人が密となる場所(映画館、劇場など)への立ち入り、社会的な行事への参加などはしないようにしてください。◦職場はお休みください。小児や妊婦と一緒にいる仕事の場合には1週間休職してください。妊娠について◦1年以内の妊娠、授乳をしないでください。(治療前に可能性があれば、主治医にお申し出ください)◦女性は1年間、男性は半年間、避妊をしてください。※…アブレーション後の避妊推奨期間は、体内のアイソトープの残留や治療(手術やアブレーション)によるホルモンバランスの影響などを考慮して設定されています。13副作用について◦ヨウ化ナトリウムカプセルによる副作用として、発生頻度はまれですが、発疹や白血球減少、ヘモグロビン減少、血小板減少、喉頭浮腫などが起こることが報告されています。◦また、将来的な副作用として、白血病、がんを発症する可能性が考えられていますが、本治療を数回繰り返す程度の被ばくでは、白血病やがんの発症が増加するという明らかな証拠は報告されていません。治療の実施に当たっては、主治医とよく相談してください。まれにアイソトープのヨウ素が頸部や唾液腺に集まることにより、腫れたり味覚異常(味が分からなくなる)が生じたりすることがあります。また、治療1ヵ月ほどしてから、白血球や血小板が軽度に減少することもまれにあります。これらの症状のほとんどは軽度で、自然に回復しますが、痛みが強かったり、血が止まらなかったりなど、身体の異常を感じた場合は、主治医に連絡してください。14投与日・観察日の記録アイソトープ治療後の定期的な受診予定の確認にこのページをご利用ください。アイソトープ治療後3ヵ月は、服用したアイソトープから出る放射線に、空港のセキュリティチェックや火災報知器などの検出器が反応する場合があります。そのような場面に遭遇した際にアイソトープ治療を受けたことの説明用にも、このページを利用してください。また、他の医療機関を受診する場合、必要に応じて医師、医療関係者に提示してください。(*アイソトープ治療を受けたことを証明する携帯用のカードもあります)治療者カードの見本ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル投与量:MBq(メガベクレル)〈投与日〉年月日放射性ヨウ素131Iベータ線、ガンマ線放出放射性同位元素/物理的半減期8.02日〈診察予定日〉月日時月日時月日時月日時月日時月日時15アイソトープ治療に関する情報サイト〈harecoco.netは、甲状腺の内用療法についての情報サイトです。〉このウェブサイトは、アイソトープ治療を受けられる患者さんとご家族の方に、対象となる疾患のこと、アイソトープ治療のことをよく知っていただくためのサイトです。あわせてご活用ください。▶http://harecoco.net問い合わせ医療機関名2021年9月作成12109050MQCAP-1-037