オクトレオスキャン検査を受ける方へ監修今村正之先生京都大学名誉教授/関西電力病院学術顧問一般社団法人日本核医学会神経内分泌腫瘍とは、神経内分泌細胞※からできるまれな腫瘍です。膵臓における有病患者数は人口10万人当たり2.69人/年、2010年における新規発症率(罹患者数)は10万人当たり1.27人/年と推定されています。神経内分泌腫瘍はNeuroendocrineTumor(NET)やNeuroendocrineNeoplasm(NEN)とも呼ばれています。神経内分泌腫瘍とは※神経内分泌細胞とは、インスリンやグルカゴン、ガストリンなどの体を調節するホルモンやペプチドを分泌する細胞です。◦神経内分泌腫瘍の分類2◦神経内分泌腫瘍の診断5◦オクトレオスキャン検査7神経内分泌腫瘍、オクトレオスキャン検査について一緒に理解を深めていきましょう。2神経内分泌腫瘍の分類神経内分泌腫瘍には、いくつかの分類法があります。どの臓器から神経内分泌腫瘍が発生したかによって分類します。神経内分泌腫瘍の多くは遺伝することはありませんが、多発性内分泌腫瘍症1型(MultipleEndocrineNeoplasiaType1;MEN1)やフォン・ヒッペル・リンドウ(vonHippel-Lindau;VHL)病という遺伝性疾患では神経内分泌腫瘍を併発することがあります。【神経内分泌腫瘍の主な発生部位】発生部位遺伝性疾患に伴うかどうか前腸◦甲状腺◦肺◦胃・十二指腸・膵臓など中腸◦小腸・上行結腸下垂体後腸◦横行結腸〜直腸3代表的な部位(膵・消化管や肺)では、腫瘍細胞を調べてどのような特徴があるかにより分類します。分類/グレード増殖に関係する因子特徴核分裂像数*1Ki-67指数*2高分化な腫瘍:神経内分泌腫瘍(NET:NeuroendocrineTumor)*3NETG1<2<3%◦腫瘍細胞は正常内分泌細胞に似ている◦増殖能:低◦悪性度:低~中◦カルチノイド腫瘍と呼ばれる場合もあるNETG22~203~20%NETG3>20>20%低分化な腫瘍:神経内分泌がん(NEC:NeuroendocrineCarcinoma)*4NEC小細胞がん(SCNEC)*5大細胞がん(LCNEC)*6>20>20%◦腫瘍細胞は正常内分泌細胞の機能をほとんど持たず、未熟である◦増殖能:高◦悪性度:高◦小細胞がん、大細胞がんに分けられるMiNEN(MixedNeuroendocrine-nonneuroendocrineNeoplasm)◦高分化型、低分化型のいずれか、または両方の場合もある◦外分泌と内分泌由来の腫瘍の双方の要素が認められる混合腫瘍WHOClassificationofTumoursofEndocrineOrgans.Eds:LloydRV,etal.4thEdition,2017IARCPress,LyonFrance./WHOClassificationofTumours.DigestiveSystemTumours.Eds:WHOClassificationofTumoursEditorialBoard.5thEdition,2019,IARC,Lyon,France.より改編・作表*1核分裂像数:高倍率視野(HighPowerField)10視野(=2mm2)当たりの腫瘍組織の中で核分裂を起こしている細胞数*2Ki-67指数:増殖に関与するタンパク質「Ki-67」陽性細胞の割合*3NETの鑑別:ソマトスタチン受容体(特にサブタイプ2型)が広い範囲で発現している*4NECの鑑別:ソマトスタチン受容体(特にサブタイプ2型)が部分的に発現、少し発現・または発現しないことが多い。また、広い範囲でがん抑制遺伝子が作るタンパク質「p53」が過剰発現したり、「Rb」が発現しない◦がん抑制遺伝子タンパク質「p53」:一つ一つの細胞内でDNA修復や細胞増殖停止、細胞死などの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持ち、細胞ががん化したとき細胞死を起こさせるとされる。p53遺伝子による機能が不全となるとがんが起こると考えられている◦がん抑制遺伝子タンパク質「Rb」:細胞周期の調節に関与しており、細胞分裂の過程回転を抑制する*5SCNEC:SmallCellNeuroendocrineCarcinoma*6LCNEC:LargeCellNeuroendocrineCarcinoma病理による分類❶膵・消化管における神経内分泌腫瘍分類分類因子特徴核分裂像数その他定型カルチノイド(TC*1)0~1◦Ki-67指数◦TTF1*5◦クロモグラニンA*5◦CD56*5◦非小細胞肺がん合併◦円形または紡錘形◦低~中悪性度非定型カルチノイド◦AC:核分裂像が目立つ/壊死がある(AC*2)2~10大細胞神経内分泌がん(LCNEC*3)>10(平均70)◦LCNEC:大型で細胞質がある◦SCLC:細胞質が乏しく、小型の腫瘍細胞が増殖する◦高悪性度◦壊死がある小細胞肺がん(SCLC*4)>10(平均80)WHOClassificationofTumoursoftheLung,Pleura,ThymusandHeart.Lyon:IARCPress;2015.より改編・作表*1TC:TypicalCarcinoidTumor*2AC:AtypicalCarcinoidTumor*3LCNEC:LargeCellNeuroendocrineCarcinoma*4SCLC:SmallCellLungCarcinoma*5神経内分泌腫瘍マーカー◦TTF1は肺および甲状腺腫瘍細胞に発現するタンパク質◦クロモグラニンAは機能性・非機能性神経内分泌腫瘍のマーカーとして使用できる糖タンパク質◦CD56は低分化で高悪性度の神経内分泌腫瘍にも比較的高頻度に発現する糖タンパク質❷肺における神経内分泌腫瘍4腫瘍から分泌されるホルモンが原因となる症状があるものを「機能性神経内分泌腫瘍」、症状がないものを「非機能性神経内分泌腫瘍」といいます。❶機能性神経内分泌腫瘍神経内分泌腫瘍から分泌されるホルモンによって、身体に様々な症状があらわれます。特徴的な症状が出現するため、早期に発見されやすいのが特徴です。機能性神経内分泌腫瘍にはインスリノーマ、ガストリノーマ、VIPオーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、セロトニン産生腫瘍などがあります。❷非機能性神経内分泌腫瘍ホルモンによる症状がないため、自覚症状がありません。ある程度腫瘍が大きくなってから健康診断や画像診断で偶然見つかることが多く、発見時には肝臓などに転移していることもあります。機能性神経内分泌腫瘍好発部位主な症状インスリノーマ膵低血糖症状ガストリノーマ胃、膵、十二指腸消化性潰瘍、食道炎VIPオーマ膵、十二指腸激しい下痢グルカゴノーマ膵紅斑、糖尿病ソマトスタチノーマ膵、十二指腸糖尿病、下痢セロトニン産生腫瘍小腸、肺、気管支カルチノイド症候群神経内分泌腫瘍の分類ホルモン症状の有無5細い管(カテーテル)を用いて、足の付け根の動脈から腫瘍につながる動脈に少量の刺激薬を注入し、刺激薬を入れる前と後で肝静脈の血液を採血してホルモンの変化を測定します。この検査によって、膵臓と十二指腸の機能性神経内分泌腫瘍の場所が診断できます。空腹時に採血をして血液中のホルモン濃度を測定し、腫瘍が何のホルモンを分泌するかを診断します。神経内分泌腫瘍の診断※SASIテスト:SelectiveArterialSecretagogueInjectionTest採血用肝静脈カテーテル刺激薬注入用動脈カテーテル神経内分泌腫瘍を調べる代表的な検査を紹介します。ホルモン測定選択的動脈内刺激薬注入法(SASIテスト※)6神経内分泌腫瘍の場所、性質を各種画像診断によって調べます。◦CTコンピュータ断層診断X線を照射して臓器の異常を見つける検査◦MRI磁気共鳴画像診断強力な磁場と電波を利用して画像化する検査◦内視鏡/超音波内視鏡内視鏡で直接見たり、超音波を当てて、画像化する検査※◦ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(オクトレオスキャン検査)神経内分泌腫瘍に発現しているソマトスタチン受容体に結合するお薬(オクトレオスキャン:一般名インジウムペンテトレオチド)を注射し、腫瘍部位を一度で全身検索できる検査※生検を行うことがあります。画像診断7オクトレオスキャン検査では微量の放射性物質を含むお薬を注射して、お薬の神経内分泌腫瘍への集積具合をみるために専用のカメラ(ガンマカメラ)で撮像します。全身が検査でき、比較的早い時期から神経内分泌腫瘍を発見することができます。オクトレオスキャン検査は、神経内分泌腫瘍に集まる※お薬(インジウムペンテトレオチド)を使って腫瘍を画像化し、局在部位を診断する検査です。神経内分泌腫瘍の全身分布の状況を把握することができます。オクトレオスキャン検査腫瘍細胞インジウムペンテトレオチドインジウムペンテトレオチドは腫瘍細胞に集まります※【インジウムペンテトレオチドの働き】※神経内分泌腫瘍であってもお薬が集まらない場合もあります。8検査前の注意点●食事制限はありませんが、十分に水分をとってください。※1●便秘がちな方は事前に医師にお申し出ください。※2●他の治療を受けている方は事前に医師にお申し出ください。❶お薬(インジウムペンテトレオチド)を静脈注射します。❷注射4時間後にガンマカメラで、全身の画像を撮像します。撮像には1時間くらいかかります。注射24時間後に1日目と同様、1時間くらいかけて撮像します。画像を確認して終了です。必要に応じて注射48時間後(3日目、注射翌々日)にも撮像を行うことがあります。※1お薬は主に尿や便として排泄されます。尿排泄を促進することで被ばくを減らし、鮮明な画像を撮像できるため、水分をなるべく多く摂取してください。※2便秘の場合は下剤を服用し、検査前に排便することが望ましいです。1日目(注射当日)2日目(注射翌日)検査の流れ9●以前、オクトレオスキャン検査を受けた際にお薬(インジウムペンテトレオチド)に対して過敏症を起こしたことがある●腎臓に障害がある●ソマトスタチン受容体に作用する治療薬を服用している治療薬の作用が消えてからでないと、正しく診断することができないと考えられるため、検査前に一定期間の休薬が望ましいといわれています。病状や服用している治療薬にもよりますので、医師にご相談ください。●妊娠中または妊娠の可能性がある基本的に妊娠している場合は検査ができませんが、妊娠中でも必要な場合はやむを得ず検査をすることがあります。検査による被ばくで胎児への影響がでることは考えにくいですが、心配な方は医師にご相談ください。●授乳中である医師にご相談ください。次のような方はオクトレオスキャン検査を受けられない、または慎重に検査を実施する必要があります。検査前に医師とご相談ください。検査を受ける際の注意検査を受けられない方検査を受ける際に慎重にすべき方10●国内外臨床試験において主な副作用は、潮紅、ほてり、頭痛が認められました。オクトレオスキャン検査は注射するお薬の量が非常に少なく、重篤なアレルギー反応などの合併症や重篤な副作用は報告されていません。●日本の場合、日常生活における自然放射線による被ばく線量は、年間約2.1mSv(ミリシーベルト)です。オクトレオスキャン検査一回あたりの全身の被ばく線量はおよそ9.78mSvであり、健康被害の心配はないと考えられる線量です。臨床試験においてはオクトレオスキャン検査の副作用は重篤なものはなく、被ばくも他の放射線検査と同等です。ご不明な点は、医師にご相談ください。オクトレオスキャン検査副作用と放射線被ばく検査1日目月日受付時間時分注射時間時分検査時間時分検査2日目月日受付時間時分検査時間時分検査3日目月日受付時間時分検査時間時分□検査日と時間を必ず守ってください。(遅れる場合はご連絡ください)□やむを得ずキャンセルする場合は、直ぐにご連絡ください。□検査前後は十分に水分をとってください。ご不明な点は、医師にご相談ください。●連絡先2020年6月改訂62006100ISOCT-6-007オクトレオスキャン検査を受ける際に注意すること