東京医科大学病院放射線科教授阿部光一郎先生監修バセドウ病のアイソトープ治療を受ける患者さんへヨウ化ナトリウムカプセルによる2はじめに………………………………………………………………………………3バセドウ病のアイソトープ治療……………………………………………4対象となる患者さん……………………………………………………………5アイソトープ治療の実際(スケジュール)……………………………6アイソトープ治療後の副作用・注意すること………………………8なぜヨウ素制限は必要なのですか?……………………………………12アイソトープ治療に関する情報サイト……………………………………………14投与日・観察日の記録…………………………………………………………………15CONTENTS3はじめに安心して、より効果的な治療を受けるためには、治療法についてよく理解しておくことが大切です。この冊子は、アイソトープ治療を受ける甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の方を対象として、治療の内容やスケジュール、治療後に起こりうる症状や注意すべきことについて紹介しています。この冊子をよく読んでいただき、アイソトープ治療をよく理解してください。治療を受けるにあたり、気になることや不安に思うことがありましたら、遠慮せずに主治医・看護師等に相談してください。ヨウ素放射線4バセドウ病のアイソトープ治療◦甲状腺と甲状腺ホルモン甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下にあり、食べ物に含まれるヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌します。甲状腺ホルモンは、新陳代謝を盛んにする働きがあり、日常生活に必要なエネルギーを作り出すのに必要なホルモンです。◦バセドウ病バセドウ病では特殊な「抗体」が体内で作られ、これが甲状腺を刺激して、過剰に甲状腺ホルモンが作られてしまいます。過剰に作られた甲状腺ホルモンが血中に分泌され、新陳代謝が活発になりすぎる疾患です。女性に多い病気であり、日本内分泌学会ホームページによると、発症の男女比は1:3~5くらいと言われています。◦バセドウ病のアイソトープ治療放射線を出す物質をラジオアイソトープ*といいます。バセドウ病のアイソトープ治療は、甲状腺にヨウ素が集まる性質を利用した治療法です。アイソトープのヨウ素が入ったカプセル(ヨウ化ナトリウムカプセル)を服用し、甲状腺に集まったアイソトープから出る放射線で甲状腺の働きすぎている細胞を減少させて、甲状腺ホルモンが過剰に作られないようにします。この治療は、日本では1950年代から行われており、アイソトープのヨウ素を使用することができる病院で治療を受けることができます。*本冊子ではアイソトープと略します。5対象となる患者さんアイソトープ治療は希望すれば受けられますが、アイソトープ治療が推奨される患者さんやアイソトープ治療が受けられない患者さんがいます。◦特にアイソトープ治療が推奨される患者さん■抗甲状腺薬で副作用が出現した方■抗甲状腺薬の治療や手術を希望しない方■抗甲状腺薬でなかなか症状が治まらない方■抗甲状腺薬中止後や手術後に再発した方■甲状腺腫を小さくしたい方■心臓病や肝臓病、糖尿病などの慢性疾患を持っている方◦アイソトープ治療が受けられない患者さん■妊婦、または妊娠している可能性のある女性■近い将来(6ヵ月以内)に妊娠の可能性、希望がある女性■授乳婦◦主治医と十分な相談が必要な患者さん■18歳以下の方■甲状腺眼症が重症の方(アイソトープ治療により眼症が悪化する可能性がありますので、一般に、眼症の治療が優先されます。)6アイソトープ治療の実際(スケジュール)治療は、ヨウ化ナトリウムカプセルを複数個服用します。外来での治療も可能ですが、カプセルは病院の特別な部屋で服用していただきますので、自宅に持ち帰って服用することはできません。◦治療前後に行うこと甲状腺にたくさんのアイソトープを集めるために、以下のようなことを行っていただきます。■食事制限(ヨウ素制限)ヨウ化ナトリウムカプセル服用1~2週間ほど前から服用2日後までは、ヨウ素を多く含む食品の摂取を制限していただきます。(*詳しくは12ページを参照ください。)■特定のお薬の服用を中止服用中の抗甲状腺薬やヨウ素を多く含んでいるうがい薬などのお薬の服用を中止していただきます。抗甲状腺薬の服用を中止すると甲状腺機能亢進症状が悪化しますので、中止する期間などは、主治医の指示に従ってください。*服用しているお薬全てを中止する必要はありません。服用中のお薬について、主治医によく確認してください。■甲状腺の大きさ(重さ)などの検査を行う場合があります。これらの具体的な期間や内容は、主治医の指示に従ってください。7◦治療をする前に行う検査服用するアイソトープの量を決めるために、以下のような検査を事前に行う場合があります。■エコー検査超音波を当てて甲状腺の大きさ(重さ)を調べます。■核医学検査(摂取率検査)検査用のアイソトープを使って、甲状腺にアイソトープのヨウ素がどれくらい集まるかを調べます。〈治療スケジュールのイメージ〉2~1週間前3日前治療日2日後~抗甲状腺薬の中止ヨウ素制限治療数日前に検査を行う場合があります。8アイソトープ治療後の副作用・注意すヨウ化ナトリウムカプセルによる副作用として、発生頻度はまれですが、発疹や白血球減少、ヘモグロビン減少、血小板減少、喉頭浮腫、血管迷走神経反応*、アレルギー反応、吐き気が起こることが報告されています。また、将来的な副作用として、甲状腺癌、白血病、遺伝因子に対する影響が考えられていますが、白血病、遺伝因子については現在のところ統計学的に有意な報告はみられていません。若年者に対するアイソトープ治療は、成人に対してより甲状腺癌発生の可能性が高いことが報告されていますので、治療の実施に当たっては、主治医とよく相談してください。*血管迷走神経反応:過度のストレスや強い痛みなどが原因で、自律神経系の突然の失調のために、血圧や心拍数が下がり、脳の血液循環量を確保できなくなり起こる、失神や目まいなどの症状です。◦経過観察中に注意することアイソトープ治療後数ヵ月は、甲状腺細胞への放射線の影響のため、血中の甲状腺ホルモンの量が増えたり、逆に減ったりします。そのため、甲状腺の機能亢進の症状が出たり、逆に低下の症状が出たり、不安定な状態となります。症状の程度や時期には個人差がありますが、治療後半年ほどは定期的(月1回程度)な診察が必要になります。特に、以下のような患者さんは症状の変化に注意してください。・高齢者・心疾患(心房細動、心不全、狭心症、心筋梗塞など)の既往歴がある方・糖尿病の方(特にインスリン治療中の方)寒がり多汗体重変化動悸9ること以下のような身体の症状を感じたら、主治医に連絡してください。甲状腺の機能が亢進する症状(治療後1ヵ月ぐらいに注意する症状)◦動悸◦息切れ◦発熱◦多汗◦下痢◦体重が大きく変わった◦眼球が出てきた甲状腺の機能が低下する症状(治療後2~4ヵ月ぐらいに注意する症状)◦いつもより疲れやすい◦食欲低下◦便秘◦寒がりになった◦皮膚の乾燥◦体重が大きく変わった◦力が全然わいてこない(うつ病)10アイソトープ治療後の副作用・注意す◦一般的な症状の変化時期と対応治療後~1ヵ月程度治療後1ヵ月程度までは、バセドウ病の症状が一時的に悪化する場合があります。これは、放射線の影響により、甲状腺細胞に蓄積されていた甲状腺ホルモンが放出されるためです。症状の程度により、抗甲状腺薬の服用を再開します。治療1~2ヵ月後以降徐々に症状が改善し、首の腫れが軽減してきます。抗甲状腺薬を服用している場合は、症状に応じ服用量を徐々に減らすことを検討していきます。治療2~4ヵ月後以降アイソトープ治療の効果に応じて、甲状腺の機能は正常から低下症まで様々な状態を呈します。放射線の影響で甲状腺ホルモンの分泌量が低下しすぎた場合、甲状腺機能低下症になります。これは一時的な場合もありますし、永続的になってしまう場合もあります。また、アイソトープ治療数年後に低下症となる場合もあります。甲状腺機能低下の症状に応じて、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。永続的に甲状腺機能が低下した場合、甲状腺ホルモン薬の服用も続けていただくことになります。治療半年~1年後以降治療効果(症状、甲状腺の大きさ、甲状腺ホルモンの量など)を確認し、必要であれば再治療を検討します。11ること◦アイソトープ治療後数日の日常生活での注意事項服用したアイソトープは、甲状腺に30~70%取り込まれ、残りのほとんどは尿へ、一部は唾液や汗、糞便などに排泄されます。そのため、治療後一定期間は尿や唾液、汗などに注意し、周りの方に対して長時間にわたる接触や近距離での接触を避けるようにしてください。■3日間、十分に水分を摂り、排泄を促してください。■3日間、トイレ使用後は、2回以上洗浄してください。男性でも座って排尿してください。■3日間、入浴は1人で最後にしてください。■3日間、タオルや衣類は他の人と共用せず、洗濯も分けて行ってください。■3日間、他の人と一緒の就寝は避けてください。■7日間、子供や妊婦と近距離(1メートル以内)・長時間の接触は避けてください。15分以上子供を抱かないようにしてください。小児や妊婦と接する機会のある職業の方は、少なくとも1週間は休職し、休職期間については主治医の指示に従ってください。■6ヵ月間は避妊をしてください。*治療後の妊娠について治療後6ヵ月を過ぎ、甲状腺ホルモンが安定するまでは、妊娠を控えるようにしてください。甲状腺ホルモンが多すぎたり少なすぎたりしている状態の妊娠は、母体や胎児のリスクが高まるため、妊娠を避ける必要があります。アイソトープ治療後は、甲状腺の機能が不安定となり、安定するまで6ヵ月ほどかかるため、男性も女性も治療後6ヵ月を過ぎて、甲状腺機能が安定してからの挙児計画が推奨されています。ヨウ素アイソトープのヨウ素〈ヨウ素制限が十分だと〉効果的な治療には、ヨウ素制限がとても重要ですアイソトープのヨウ素が取り込まれやすいヨウ素の量が少ないアイソトープのヨウ素が取り込まれにくいヨウ素の量が多い〈ヨウ素制限が不十分だと〉12なぜヨウ素制限は必要なのですか?甲状腺は、甲状腺ホルモンを作るためにヨウ素を取り込みます。ヨウ素は、昆布や海苔といった海藻類に多く含まれています。これらの食品を好んで食べる日本人は、1日に1~3mgのヨウ素を食べていると言われています。これに対して、治療量のアイソトープ500MBq(メガベクレル)中のヨウ素の量は、およそ0.0001mgとごく微量です。従って、通常通りの食事を続けている状況では甲状腺にヨウ素が多く蓄積しており、治療用のカプセルを飲んでもアイソトープがほとんど取り込まれず、治療効果が得られないことが予測されます。そのため、体内のヨウ素の量を減らす目的で、治療の1~2週間ほど前からヨウ素を多く含んだ食品の摂取を控えていただきます。食事内容やヨウ素制限の期間については、主治医の指示に従ってください。13〈ヨウ素制限に関する参考資料〉▪パンフレット「ヨウ素制限のコツ」▪ヨウ素制限中の献立例が、甲状腺専門病院などのホームページに紹介されています。・伊藤病院(東京都)▶https://www.ito-hospital.jp/・野口病院(大分県)▶http://www.noguchi-med.or.jp/▪ヨウ素制限用食品が株式会社コスミックコーポレーション(https://www.cosmic-jpn.co.jp/)から販売されています。◦服用するカプセルの大きさやアイソトープのヨウ素の量6.0mm×17.5mmの大きさのカプセルを組み合わせて、複数個飲んでいただきます。においや味はありません。カプセルの種類アイソトープのヨウ素の量(検定日時1カプセル中)ヨウ化ナトリウムカプセル-1号37MBq約0.000008mgヨウ化ナトリウムカプセル-3号111MBq約0.000024mgヨウ化ナトリウムカプセル-5号185MBq約0.000040mgヨウ化ナトリウムカプセル-30号1,110MBq約0.000241mgヨウ化ナトリウムカプセル-50号1,850MBq約0.000402mg*カプセルは実物大です。14アイソトープ治療に関する情報サイトこのウェブサイトは、アイソトープ治療を受けられる患者さんとご家族の方に、対象となる疾患のこと、アイソトープ治療のことをよく知っていただくためのサイトです。あわせてご活用ください。MEMO▶http://harecoco.net〈harecoco.netは、甲状腺の内用療法についての情報サイトです。〉15投与日・観察日の記録アイソトープ治療後の定期的な受診予定の確認にこのページをご利用ください。アイソトープ治療後3ヵ月は、服用したアイソトープから出る放射線に、空港のセキュリティチェックや火災報知器などの検出器が反応する場合があります。そのような場面に遭遇した際にアイソトープ治療を受けたことの説明用にも、このページを利用してください。また、他の医療機関を受診する場合、必要に応じて医師、医療関係者に提示してください。(*アイソトープ治療を受けたことを証明する携帯用のカードもあります)ヨウ化ナトリウム(131Ⅰ)カプセル投与量:MBq〈投与日〉年月日放射性ヨウ素131Ⅰベータ線、ガンマ線放出放射性同位元素/物理的半減期8.02日〈診察予定日〉月日時月日時月日時月日時月日時月日時2020年9月作成12009200QCAP-1-036